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執行官の現況調査義務|長瀬不動産鑑定事務所 広島市

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執行官の現況調査義務
平成21年1月30日に、さいたま地裁で、競売に絡む注目すべき判決がありました。
競売物件落札後、競売物件内で占有者が自殺していることが判明。その調査を怠ったとして、落札者である宅建業者が裁判所の執行官を訴えた裁判で、裁判所は執行官に過失なしとして訴えを退けました。
競売物件を購入しようとする者は、三種の神器(最近では競売3点セット)と呼ばれる、現況調査報告書、物件明細書、評価書の3つを調べ、現地を確認し、入札します。
競売物件は、債務者が任意の支払いに応じないとき、債権者の申し立てに基づいて、強制的に売却する物件です。
所有者の同意が得られないため、入札参加者は物件内を閲覧できません。
この入札参加者の閲覧に代わるものとして、裁判所の命により執行官が物件の現況を調査確認し裁判所に出す報告書が、現況調査報告書です。
その調査に過失があり落札者に損害を与えるなら、執行官が損害賠償責任を負うのは、民法上当然のことです。
問題は、執行官に過失があったかどうかであり、裁判でも、その点が争点となりました。
判決の要旨は、通常行うべき調査義務を怠った場合過失ありとすべきところ、その調査は民事執行法の下迅速に行われなければならないという時間的制約また執行費用の範囲内という経済的制約を受けているから、現況調査報告書の記載内容と実際とが違っていても直ちに執行官の過失が認められるわけではないとする。そして、裁判所の認定した事実では、通常行うべき調査を怠ったとは認められない、と裁判所は判断したのです。
競売物件は安いということで、最近では、業者以外の素人も参加しています。
しかし、このようなリスクがあるからこそ、市場価格よりも減価して売却基準価格が設定されていることを忘れてはいけません。
また、上記3種の神器を確認するだけでは安心できないのであり、現地確認が必須だということに留意すべきです。
なお、判決の中で、占有者の自殺が売却不許可取消事由に当たり得る点も言及しており、
落札者は全く保護されないわけではないようです。
しかし、売却不許可取消事由に当たリ得るからと言って、直ちに執行官の過失が認められるわけではないとしたものであり、判決は妥当だと感じました。
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